2015/10/10
和菓子界のメイン・ストリートを行く「まんじゅう」の中でも、 皮に自然薯芋の入った白い薯蕷(じょうよ)饅頭は 最もまんじゅうらしい まんじゅうと言えるかもしれない。
シンプルに完結した佇まいもそうだが、 薯蕷饅頭は、日本まんじゅう史の原点である。
時は、室町時代初期(1341年〜1349年頃)
中国(元)に留学していた禅僧 竜山徳見が、 林浄因(りんじょういん)を伴って帰国。 林浄因は手製のまんじゅうを光明天皇に献上し、 大変に喜ばれたという。
この時作られたのが、 皮に山芋を使った藷蕷饅頭。
まんじゅうの中身=餡は、日本の禅宗で肉食が禁止されていたので 小豆と、当時の甘味料 甘葛煎(あまずらせん)を代用した。 そしてこれが、日本初のまんじゅうとなった。
シンプルな藷蕷饅頭は、 お寺や神社の御供物としてもよく作られる。
光明寺『十夜法要*』のために作られる 大くにの「光明寺まんじゅう」は、 お寺の焼印がくっきりと入った、 小ぶりの小判型で、いたってシンプル。
藷蕷饅頭らしいしっとりとした皮と 濃密な こし餡の風味が、 直球の美味しさでまっすぐ届く。
地元の人は『お十夜』と呼ぶ『十夜法要』の四日間は 昼夜に渡って行事が次々と盛大に開かれる。
とりわけ境内のテンションがあがるのは、13日と14日に 九品寺から光明寺の境内まで、100メートルにも及ぶ 長い行列がつづく練り行列「お練り」である。
さまざまなお寺から集まった僧侶たちが 身にまとう衣のデザインはいろいろ。 大きな帽子(水冠)をかぶっていたり、 色彩も造形も華やかで、エキゾチック。 その大行列は、壮観である。
境内には、昼間は金魚すくいやヨーヨー釣りなど、 子どもたちが楽しめる定番の出店がいっぱい。 夜には、大人が美味しくいただけるお店がいっぱい。
だから鎌倉では、子どもも大人も 毎年楽しみにしているお十夜なのだ。*
十夜法要の起源は、戦乱が続いていた室町時代中期 地獄のような苦しい生活を送っていた民衆を救うための法要を 時の土御門天皇が、光明寺に許したこと(勅許)がはじまり。
1495年(明応4年)の十月に初めて行われ、 以来五百年以上続けられてきた。
時代は世につれ変わっても、 楽しみに思う人の気持ちはきっと変わらない。
秋のひととき、平和な暮らしに感謝しながら、 光明寺まんじゅうを いただきたい。
*十夜法要(お十夜)は毎年10月12日〜15日 光明寺のHP http://komyoji-kamakura.or.jp/
*お十夜の楽しみ(大人の部)はこちらから〜 http://kamakurabonz.com/pray/post_67.html
------------------------------------------------ *光明寺まんじゅうは、境内で販売
大くに 鎌倉市大町2-2-10 0467-22-1899 am 8:00- pm 6:00月休( 祭日の時は火休) 秋は、栗まんじゅうもよい。
photo&文 中尾京子
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