2015/08/20 まんじゅうにも季節があることを、知らなかった。 鎌倉の和菓子屋さんで気がつくまでは...
長谷『するがや』の店頭で 「水まんじゅう」の文字を初めて見た時、 いったい全体 どんなまんじゅうなのかと、 体内のまんじゅうDNAがざわついた。
それは、夏が終わると姿を消してしまう まんじゅうであった。
材料は、葛粉・砂糖・澱粉・あずき、以上。 しかし書かれていない材料がもう一つ、「水」である。 このシンプルな材料から、かくも至福なるものが 生まれるとは。
「水」を制すもの、「和菓子」を制す。 まさに、水マジック。
この白濁したまんじゅう生地は こしあんを包み、まあるいカタチのまま持ち上げることのできる ギリギリの水加減、ギリギリのやわらかさで成立している。
アイスクリームのコーンのように折られた笹の葉から プリンと顔をのぞかせた水まんじゅう。
緑と白の対比が、すでに目に涼しい。 手に取ると笹の葉がほのかに香り、 口に入れた瞬間から、 ひんやり、ぷんわり、つるるんん 噛むというよりトロけるままに溶かしながら ノドを通り抜けるところまで、快い。
海からの南風が吹く 湿度の高い鎌倉の夏に この清涼感はたまらない。 まんじゅう万歳!
鎌倉の夏には、 いくつもの特別な日がやってくる
提灯が夜空に浮かぶ八雲神社の大町まつり 御神輿が沖まで船で渡る石上祭り 浜で見上げる花火大会(今年は残念ながら中止) 鶴岡八幡宮の境内を飾るぼんぼり祭り 真夜中の覚園寺にお参りする黒地蔵縁日 お盆を迎え 建長寺や円覚寺などでは施餓鬼会の法要があり 盆踊りで浜や境内がにぎわい...
でも、夏は短い。 その姿をつかまえた、と思った頃には もう季節は先へと進んでいる。
日ごとに日暮れは早くなり 気づけば草むらの鈴虫やコオロギたちが リンリンと鳴いている。
まぶしい光の日々は、 あっという間に過ぎ去ってしまう。 水まんじゅうも行ってしまうのだ。
鎌倉の夏が、少しずつ秋へと移りゆく時、 去りゆく時間を惜しみながら つるるんといただく水まんじゅうは、 切なくて、しみる。
---------------------------------------------- するがや 鎌倉市長谷1-11-21 0467-22-1886
水まんじゅうは、こし餡のほかに、 メロン餡、マンゴー餡もあり。 白玉粉と葛粉で作られた「水大福」も夏季限定。
12月に創業78年(昭和12年12月12日創設)イチニイチニイチニ 由比ガ浜通りの本店の壁にかけられたモノクロの写真から 当時の活気が伝わってきます。 店先で焼いている「どら焼」が目印
photo&文 中尾京子
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